六卷
釋空海著
此書は、我邦に於ける詩文話の最古なるものにして、書中概ね四聲を論じ八病を擧げ、或は格式を論じ、或は體裁を辯ず、我邦韻鏡の學、實に此に起れり、弘法大師嘗て嵯峨帝の問に答へて、天子聖哲と奏せしが如き、言々皆韻に協はざるものなし、顧ふにその入唐の時に當りて、名公鉅卿より直ちに傳授を得しものならん、市川寛齋の半江暇筆に曰く、『唐人の詩論、久く專書なし、其の數.載籍に見はるゝも、亦僅々晨星の如し、獨我が大同中に、釋の空海、唐に遊學し、崔融の新唐詩格、王昌齡の詩格、元競の髓腦、皎然の詩議、等の書を獲て歸る、後ち文鏡祕府論六卷を著作し、唐人の巵言盡く其の中に在り』と、是の編一たび世に出でゝ、唐代作者の祕奥發露せられ、殆んど遺す所なし、洵に雲霧を披きて青天を覩るの概あり、實に文林の奇籍、學海の祕〓と謂ふべし、卷を分つこと六、天・地・東・南・西・北・の六字を以て符號とし、一卷二卷といはず、其の自序に、謂ふ配卷軸於六合、懸不朽於兩曜、名曰文鏡祕府論と、著作の大旨も亦推すべし、編中に引く所の詩句、往々全唐詩に載せざるものあり、是れ亦入唐の日に見し所の各家の集、今の本と異るものあるなり。
此書、舊本誤謬極めて多く、往々讀むべからざる所あり、今嚴に校訂を加へ、文選及び唐代諸家の詩句を引けるものは、一々之を原書に參し、其誤れるものは之を正し、その闕けたるものは之を補ひ、其の兩可にして、適從する所を知らざるものは、姑く舊文を存して、異文をその下に注す、舊本、正文の旁に異文を録せるものは、今悉く之をその句下に注せり、更に 帝室の御藏に係る高山寺舊藏の古寫本を借りて之を校し、一々その異同を注せり、尚又、山田永年氏の活宇印行に係る文筆眼心抄をも參考せり、帥ち抄と書せるもの是れなり、凡そ新に注するものは必ず一小圈を施し、以て原注に別てり、但し此書按了の後、更に異文あるを發見するものは之を欄外に掲ぐ、其の語繁にして欄外に收むる能はざるものは、校補として卷末に載せたり、斯く校訂に意を用ふれども、本文の意味不明の爲めに翻譯を誤れるもの多しと信ず、讀者幸に之を指摘せらるれば幸甚。
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天卷
調四聲譜
調聲
詩章中用聲法式
七種韻
四聲論
地卷
論體勢等
十七勢
十四例
十體
六義
八階
六志
九意
東卷
論對
二十九種對
筆札七種言句例
南卷
論文意
論體
定位
集論
西卷
論病
文二十八種病
文筆十病得失
北卷
論對屬
帝徳録
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