目次
一 序説
二 發生時代
一 概説
二 宗鑑と犬筑波
三 守武と獨吟千向
三 貞門時代
一 概説
二 貞徳と貞門の俳諧
三 貞門の人々
四 談林時代
一 概説
二 西山宗因
三 談林俳諧の特質
四 談林の人々
1井原西鶴 2岡西惟中 3菅野谷高政
4田代松意 5其他の人々
五 蕉風時代
一 概説
二 蕉風の先驅
三 蕉門の人々
四 貞門・談林の餘流
六 享保時代
一 概説
二 洒落風と化鳥風
三 美濃風と伊勢風
四 淡々と京阪の俳壇
五 五色墨
七 中興時代
一 概説
二 中興の諸家
1與謝蕪村 2加藤曉臺 3三浦樗良
4堀麥水 5高桑闌更 6加舍白雄 7大島蓼太 8其他の人々
三 凉袋・太祗・也有
八 化政時代
一 概説
二 中興諸家の門流
1蓼太門 2白雄門 3曉臺門 4闌更・蕪村・青蘿・樗良門
三 江戸の諸派と成美
四 京阪の諸派と地方俳壇
九 天保時代
一 概説
二 江戸の俳壇
三 上方の俳壇
四 地方の俳壇
序説
俳諧の史的展開のあとを考察するにも、一般の文學史と同じく、そこには種々の論究すべき問題が多い。俳諧と時代相との關係、俳諧の藝術的意義に關する解釋の變遷、作家の個人的生涯と作風、各流派の發生と交渉、俳諧としての特殊な附合の發逹等々、複雜多樣な研究が必要とされる。特に等しく俳諧と言つても芭蕉以前と以後に於ては、その藝術的意義に根本的の相違があり、同じ時代に於ても各派によつて全然ちがつた作風の傾向を示してゐる。今限られた紙面でこれらの問題のすべてに觸れようとする事は、もとより不可能であるが、出來るだけ俳諧に關する諸事項を普遍的に取扱つて行きたいと思ふ。
俳諧にも江戸時代に於ける一般の文學に件ふ消長起伏はもとより存するが、俳諧は又俳諧として別に考察さるべき特殊の時代的區劃をもつて居る。單にその藝術的價値だけからいへば、大きく芭蕉と蕪村との二時代に焦點を置いてもよからう。しかしこの二時代の出現を十分理解し、延いて今日の俳諧と明日の俳諧とを論する爲めには、やはり俳諧の發生時代からの變遷を忠實にながめて來るべき必要がある。よつて今はほゞ普通の區分に隨ひ、左の各時代に分つて敍述を進める事にしよう。
一、發生時代 俳諧が連歌の餘興として發生した江戸以前の時代。
二、貞門時代 松永貞徳を中心として俳諧が獨立の文學的基礎を得た時代。
三、談林時代 西山宗因の提唱によつて俳諧が傳統的の覊束から解放された時代、
四、蕉風時代 芭蕉を中心として俳諧に眞の藝術的意義が與へられた時代。
五、享保時代 芭蕉歿後俳諧が墮落した時代。
六、中興時代 蕉風復歸の新運動が合流して蕪村曉豪等を生んだ時代。
七、化政時代 中興諸家の餘流がなほ俳壇を維持して居た時代。
八、天保時代 俳諧が大衆の平俗に化せられた時代。
但し本講座では別に芭蕉・蕉門十哲・蕪村・一茶・俳文の五項目が設けられてあるので、芭蕉や蕪村に關する個人的な問題や作風については重複を避ける爲に省いた。尤も芭蕉の俳諧の特質の如きは、單に芭蕉一箇の俳風として論するにとゞむべき事ではない。蕉風時代の核心たるべき最も重要な事項で、これらを省く事は、實は俳諧史として體を成さぬ事であるが、本講座としては讀者に何等の支障を與へぬであらう。
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