2005年03月18日

藤井乙男「御伽草子」(岩波講座日本文学)

hujii_otogi.pdf

 足利期から徳川の初期へかけて續出した通俗訓蒙的で單簡素朴な小説を御伽草子といつたのは何時頃からの事であらう。
 トギといふ語は平安朝の文獻には發見されないやうである。源平盛衰記・増鏡等に至つて話相手の意味に用ひられた、さうして之に伽の字をあてるやうになつたのは、字書類では貞應板の法華經音義が最も早いものかと思はれる。これより前すでに類聚名義抄にも伽の字は見えるが、それにはヨル・ユタカニとのみあつてトギの訓はない。元來伽の字は伽羅・伽藍などの如く梵語の音譯にのみ用ひられた意味のない字である。それを日本で人加の字態によつてトギと訓じたのであるから、類聚名義抄のヨルも寄ルの意で、人のそばに寄り添ひ伽する心を現はしたのかも知れない。これから推してゆくとトギの語はツキの變化でなからうか、大名の近侍の御伽衆などは御付衆といつても差支ないやうだ。
 トギの語が次第に汎く行はるゝにつけて、その意義も擴張して話相手のみならす、すべて人を慰め樂ましむる對象物をさすやうになつて、江戸期の小論類の題名に之を冠するものが多い。年表類によつて見ると次の如き流行がある。
  御伽物語   萬治二年
  伽婢子    寛文六年
  續伽婢子   (不明)
posted by うわづら文庫主人 at 12:16| Comment(0) | TrackBack(1) | 国文学論文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/2473608
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

とぎ【伽】
Excerpt: 藤井乙男「御伽草子」に、類聚名義抄にも伽の字は見えるが、それにはヨル・ユタカニとのみあつてトギの訓はない。元來伽の字は伽羅・伽藍などの如く梵語の音譯にのみ用ひられた意味のない字である。それを日本で人加...
Weblog: 日本語の語源説
Tracked: 2005-03-18 16:30