2005年03月18日

潁原退蔵「日本文學書目解説(五)上方・江戸時代」(岩波講座日本文学)

 上方・江戸時代の文學はその種類の多方面な事に於て、その作品の數の豐富な事に於て、前代に全くその比を見ない。試みに最近世に出た「日本文學大辭典」の「あ」の部だけについて檢して見ても、その全體の項日中恰も半數は上方・江戸時代に屬する條項である。この比例は恐らく全部に亙つてもさうであらうと思はれる。勿論これらの項目中には、人名その他の事項も含んではゐるが、實はもし文學書目だけでも、これを細大洩さす列擧するならば、この比例は半數位の程度には止らないのである。朝倉無聲氏の「日本小説年表」によると、全體四百十三頁の中古代篇は僅かに二十七頁を占めてゐるにすぎす、他はすべて上方・江戸時代に屬するものである。近代日本文學大系の「日本小説年表」について見ても、やはり五百十五頁中室町時代までのものは廿七頁を費して居るだけである。これは小説だけの數である。況んやこれに上方・江戸時代の特有文學たる俳諧・狂歌・川柳・淨瑠璃等々を加へたなら、室町以前の和歌や日記等を合せても、その數量に於ては匹敵すべくもなからう。上方・江戸時代の文學書目を比較的汎く集めた「新群書類從第七」は、書目だけで實に菊判七百五十餘頁に達して居る。しかもこれとても勿論決して全部を網羅して居るのではない。
 上方・江戸時代の文學書目は此の如く多種多數である。それらの全般に亙つて遺漏なき解説を試みるといふ如き事は、到底一人の力のよくする所ではない。況んや筆者の如き寡聞淺學な者が、その任に當らうとするのは自ら揣らざる事甚しいにちがひない。筆者もそれは十分自覺して居る。しかし今は眞の研究的な態度でなく、全く啓蒙的な意味で些か解説を試みたいと思ふ。よつて上方・江戸時代の各種の文學書目に亙つて、代表的なもの、有名なもの、若くは比較的稀覯なもの等を選んで、極めて簡單な解説を加へる事にしよう..それにしても限られた紙面では、あまりに意を盡さない事が多いだらうと恐れる。尤も近時古典の翻刻が盛んとなるに從ひ、上方・江戸時代の文學書も、その代表的なものは大概翻刻され、特に最近出た叢書類中に牧められたものは、極めて懇切な解題が施されてあるのが多い。それで本講座に於ては、この種の翻刻書や解論書がある書目については、それらの書名を最後に示して、解読の不備を補ふに資した。又翻刻・解説の書類が頗る多いものにあつては、なるべく詳しい解論を避け、若くは全然これを省く事にした。かくして幾分紙面を節約する事が出來、しかも讀者の研究上にはさして不都合はなからうと思ふ。なほ本解論は最初の擔任豫定が變更されて、急に筆者が擔任する事となつた爲、執筆に十分の暇がなく、疎漏と不備とは益々多きを加へた事と思ふ。偏に讀者の寛恕を乞ひたい。
ebara_syomoku.pdf
小説(仮名草子・浮世草子・洒落本)
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小説(滑稽本・噺本・讀本・草雙紙・人情本)、戲曲、歌謡、狂歌狂文、俳諧雑俳
posted by うわづら文庫主人 at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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