私は昭和九年以來、日本放送協會に職を奉じてゐる、いろ/\講演についても希望なり所感もあるが夫れは遠慮して他日にゆづる。こ丶で體驗といふのは、私が東京日日新聞社の社會部長や事業部長をしてゐた時代のことである。實に貧弱な體驗だが講演、の回數に於ては相當だと思ふ。即ち東は北海道、樺太に到り、西は福岡から長崎、鹿兒島に及んでゐる。中には自慢話らしいのもあるが決して自ら誇る爲の何物もない、只斯ういふ話もあつたといふ實情を書く上から自分が出たので、そこで自慢らしい話に落ちたのである。「實例篇」等には古く記録して貰つたものや、雜誌新聞等の切拔きに依つた。今日としてみれば甘い話であるが、裝飾をせす生地そのま丶を出すがいゝと思つて其儘にした。
昭和十七年の孟夏、芝公園の僑居にて
著者
話術覺書 目次
小序
話術覺書
準備篇
一、先づ思想
二、草稿の用意
三、草稿に囚るゝな
四、服裝と食事
放送とお話
癖
聲質・聲量
體驗篇
一、初めての講演
二、白瀬中尉の南極探検
三、秩父の農村
四、信州の農村から
赤坂離宮の光榮
御童謠のレコード
實例篇
一、雪の日の鳩の親子
二、柿の本に手をかける
談片篇
一、二度なすること
二、思はぬ御膳
三、ニユース講演
四、大隈侯と伊藤公
五、唐宋の文明は日本に
座談と講演
結婚席上にて
人生の大道
飛行詩人を悼む
和風翁の靈前にて
句碑除幕式にて
藝といふこと
新聞の今昔
奥村五百子女史
歸還軍人を迎へて
友人の一周忌に
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