2005年03月18日

村岡典嗣「日本文化史概説」(岩波講座日本文学)

 日本文化の史的概説は、客觀的に所謂日本文化の意義に於いても、また主觀的に、その史的取扱ひ方に於いても、之を種々の見地から、爲すことが出來よう。まづ前者に於いて、日本文化は、日本に於ける文化の意味にも考へ得べく、また、日本的文化の意味にも考へ得る。第一のものは、文化の一般性、もしくは普遍性に重きをおいて考へるので、いはゞ世界文化史的に見て價値あるものゝ、日本といふ國土に於ける發現の歴史に外ならない。この見地からせば、日木文化史は、明治以前に於いては、大部分は東洋文化史即ち主として支那文化史の延長であり、明治以後に於いては、大部分は西洋各國文化史の延長である。世界文化史上、日本が嚴密な意味で、未だ創造的國民であり得なかつた事實は、かゝる見地からの日本文化の意義の學的規定を、少くとも可能ならしめる。而してかくの如き日本文化觀は、東西に亙つての世界文化の、この島帝國の一舞臺に於ける一切の發現を、對象とするところからして、自らに極めて廣汎な、而してまた、多趣多樣な問題を提供する。之に反して、第二のものは、日本文化の特殊性に重きをおいて考へようとするもので、これによれば、日本文化史とは、他國民の丈化に野して晒何等かの特色を有する日本國民文化の歴史である。國民文化てふ觀念がこゝに基本となるのは、明らかである。而してこゝにしば/\主張せられるのは、文化史上の國民主義である。帥ち文化は、國民性に於いて、はじめて眞の發現をなす、國民文化こそは眞の文化であるといふ見解である。

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